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製品開発ストーリー
『ACES(エイシス・Acute Care Elastic System)』

『ACES』は、救急現場において人手が必要になった際、医師や看護師など対象者に対して、LINE WORKSなどで一斉に集合要請ができるシステムです。他の人の応答情報を共有できる、必要な人数を過不足なく集合できる、PCやスマートフォン、タブレットなど多様なデバイスで利用できるなど、現場の意見を反映した機能を備えています。

開発の契機となったのは、中田が自身の専門である遺伝子研究のデータ解析を学生時代の同級生である山尾に依頼し、日本のITエンジニアの高い技術力を実感したことでした。

中田「日本の急性期医療の現場はデジタル化が大変遅れており、一刻の猶予も許されない状況下では命に関わる場合もあります。それをITの力で改善したいと考えました。最初はわかりやすい課題から解決していこうと、開発に着手したのが『ACES』です」
中田「救命救急センターには、深夜の多重事故などで突然多くの重症患者が搬送されてくることがあります。現場としては、すべて受け入れたい。しかし、夜間や休日は病院で待機している人数が少なく、どうしても受け入れを断らなくてはならないケースがあることは、長らく救急現場の課題でした」

従来の集合要請には電話が使われていましたが、1人ずつしか呼び出しができず、個々に状況を説明する手間や時間もかかっていました。『ACES』は、現場の状況や必要人数、また“手術可能な医師”“専門医”など、どのような人が必要なのかといった情報を、対象者の手元にあるデバイスへ一斉に伝えられるシステムを目指して開発が進められました。

はじめに、メールの「CC」にすべての対象者を入れて同報メールを送るシステムを構築。しかし、一方通行の連絡となるため「誰が対応できて、誰が対応できないのか」がすぐに把握しづらいという新たな課題が浮上しました。

そこで、LINEやLINE WORKSなどチャットアプリケーションでの一斉配信を可能にしたほか、各自の応答情報をクラウドサーバに蓄積し、すべての人が瞬時に確認できるよう改良。例えば、「集合できる医師は若手が多いから、ベテランも行った方がよいだろう」といった判断もスムーズにできるようになりました。

要請は応答があるまで繰り返し自動送信、最終的には自動電話をかけるなど、対象者が要請に気づかないリスクを軽減する工夫もされています。

集合要請画面。対象者、人数などを入力、一斉に集合要請を行う。
スタッフに届く通知画面。集合要請にはワンクリックで応えられる。
集合要請への応答状況は、一元管理されて誰もが把握ができる。

中田「人手が必要とはいえ、逆に人を多く呼び出しすぎてしまうのも問題です。そのため必要人数に達したら、要請を自動解除する機能もつけました。ID・パスワードを入力せずワンタップで応答できるのもこだわった部分です。スピーディに応答できるよう使いやすいシンプルな操作感を追求しています」

現場はどのようなことに困り、どのようなものを求めているのか。
『ACES』の開発において、「エンジニアが現場を理解するプロセス」は大きな鍵となりました。

山尾「エンジニアは医療従事者ではないので、現場を理解する点で各々大変な部分があったのではないかと思います。中田を含めた医療スタッフとの情報共有の場を設けたり、ときにはエンジニアが病院を見学させていただいたりすることもありました。実際の現場や雰囲気を垣間見ることは、エンジニアとしてイメージが湧きやすくなり、良いプロダクト作りにつながったと思います」

営業という立場で、医療機関と密に連携を取りながらシステムの開発や導入をサポートする洲崎もまた、現場とエンジニアチームの橋渡しを担いました。

洲崎「病院の方々から直接話を伺い、汲み取ってきた課題やニーズをどのように機能化していくか、エンジニアのみなさんにつなぎこむのが私の役割です。現場の方々が思い描いているものを形にするためにはどうしたらよいかを、つねに考えながら動いていました」

現在に比べると開発メンバーは少なく小さなチームでしたが、それぞれが自身の役割を果たしつつ、ときに連携しながら突き進む日々。試行錯誤も重ねながら、ついに誕生した『ACES』は、2016年11月に中田が所属する千葉大学付属病院救急医療センターにおいて運用を開始しました。

やがて、一つの大きな成果が出ました。ACESを導入することで同じ職員数であっても、複数の救急患者を受け入れられる確率が上がることが明らかになったのです。『ACES』の有効性については、2017年1月に論文を発表しています。(Scand J Trauma Resusc Emerg Med. 2017;25:6.)

2017年1月に『ACES』の有効性を論文発表している。(Scand J Trauma Resusc Emerg Med. 2017;25:6.)

休日や深夜においても、救急車が到着する前に必要な人員、専門医等がそろい、患者を受け入れられる体制を整えられる。『ACES』は、これまでの救急現場の状況を劇的に改善しました。

洲崎「救急の先生方や看護師の方々からは、“本当に現場が求めているものを開発してもらった”、“非常に良い仕組みですね”といったお褒めの言葉をいただき、大変うれしく思いました」

現在、『ACES』はさまざまな病院に導入され、救急時の柔軟で万全な受け入れ体制の強化を支えています。

千葉大学医学部附属病院などに『ACES』は導入されている。

中田「『ACES』は単に一斉要請ができて便利というだけでなく、人的リソースはそのままで複数の救急患者の受け入れが可能となり、“救える命が増える”という大きなメリットがあります。“ITの力で救急医療をより良く変えることができる”。『ACES』の開発で得た成果は、Smart119のさまざまプロダクト開発の礎となりました」

医療研究において欠かすことのできないIT技術を、医療現場における課題にも応用することで、医療全体を向上させていく。『ACES』の誕生で、「命を救う」への新しいアプローチが始まりました。

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