株式会社Smart119|安心できる未来医療を創造する

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製品開発ストーリー
『Smart119』

『Smart119』は、市民から119番通報が入った際、音声認識やAIを活用し、消防指令センター、救急隊、医療機関の間においてリアルタイムで情報共有を行うことより、救急搬送困難事案(たらい回し)を防ぎ、迅速な受入体制をサポートする救急医療支援システムです。2020年7月より千葉市消防局で運用が開始されたほか、全国の自治体で社会実装を目指した実証実験が行われています。

『ACES』の開発により、ITの活用は救急医療の向上となること、そしてより多くの命を救うことにつながると確信した中田は、急性期医療の現場における深刻な社会的課題を解決すべく動き出しました。

一般的に、119番通報から救急隊が到着し、搬入先の病院を選定して患者が搬送されるまでの情報伝達フローは、無線や電話によるアナログ・リレー方式となっています。そのため、情報が不正確に伝わり適切な医療を受けられないケースや、搬入先が決まるまでに時間がかかり「たらい回し」につながるケースが発生しているのです。

現状のアナログ・リレー方式では通報から搬送まで時間を要す。通報内容や症状など、関連情報はすべてクラウドに集約される

中田「救急現場は、一刻も早く患者さんを病院に搬送し治療を開始しなければ、命が途絶えてしまうかもしれない状況です。消防指令センター、救急隊、医療機関の3者間の情報伝達、業務連携をITの力で強化できれば、より速やかに搬入先病院を決定し、病院側も治療体制を万全にできると考えました」

病院内で使用する『ACES』とは異なり、『Smart119』は院外の機関も巻き込んだ大規模なシステムです。開発にはコストの壁が立ちはだかりましたが、日本医療研究開発機構(AMED)において「救急搬入のたらい回しをなくす」という社会的有効性が認められ、研究費の提供を受けることに成功しました。(https://smart119.biz/randd/amed1.html)

そして2016年、いよいよ『Smart119』の開発を開始。
2018年には、実装に向けて株式会社Smart119が設立されました。

中田「『Smart119』は『ACES』よりも機能が複雑で、大掛かりなプロジェクトとなりましたが、会社組織ができて新たにさまざまな経験値を持つメンバーが加わったことで、ディレクター、プログラマー、SE、医療従事経験者、営業など役割を細分化し、大きなチームで臨むことができました。それぞれの知見やアイデアを共有しながら開発を進めていく。こうした企業文化は今も当社に根付いています」

社会実装のため千葉市消防局との協働開発が始まると、消防指令センターや救急隊員からはさまざまなフィードバックが寄せられました。それらに対して有効な解決策を提案しては、現場で検証する。そうしたサイクルを重ねながら、『Smart119』の機能性や操作性はブラッシュアップされていきました。

例えば、一刻を争う現場では、情報入力の作業負担軽減に加え、正確性や迅速性を備えたシステムが求められました。
そこで採用したのが、音声認識入力です。通報を受けた消防指令センターの職員が、場所、状況、容態といった通報内容を復唱すると、その音声が自動的にテキスト化され、救急隊員が持つタブレット端末に転送されます。

指令センターと通報者の通話音声を文字変換し記録。救急隊に共有される

現場に到着した救急隊員は、応急措置を行いつつ、新たに判明したバイタルサインや容体変化、処置内容といった情報を入力します。音声やタップで入力できる仕様になっているため、操作に時間を取られません。

ここまでのプロセスで、病院へ受入要請をするための情報はすべて整い、速やかに複数の病院への受入要請を一括送信することが可能となります。

救急隊員は、音声入力やタップ入力など簡単な操作でバイタルサインや処置内容などを入力できる

受入可能な病院が複数ある場合は、現場から最短の距離にある病院を選択できるほか、救急搬送中は、患者の容態を受入先の病院にリアルタイムで共有することが可能です。また、入力した症状などのデータに基づき、高精度のAI予測診断アルゴリズムが脳卒中や急性心筋梗塞といった病気の可能性を予測します。

それにより、病院は患者が到着する前に、患者の容態に対して的確な治療体制を整えておくことができます。

複数の医療機関へ一括で受入要請をかけて回答を確認できる

「現場が本当に求めているシステムを作りたい」
会社組織となりメンバーが増え、大きなチームとなってもこの思いに変わりはありませんでした。
現場のニーズに即した機能を検討するため、エンジニアが消防指令センターや救急車を見学したり、営業が職員の方々から直接お話を伺ったりと、綿密なコミュニケーションや連携を通じて、よりよりシステムを目指していきました。

山尾「現場の声を聞きながら改善を繰り返していくことは、プロダクトの開発において非常に大切なプロセスです。一方で、あれもこれもと多くの機能を搭載しすぎると、逆に使いにくいシステムになってしまう場合もあります。その点は気をつけなければなりません。実際の業務や職員の方の動線などを見せていただきながら、使いやすさも重視しました」

洲崎「医療機関の方々、消防機関の方々、そして我々も、“救える患者さんを増やしたい。そのためのシステムを作りたい”という思い、目指すところは同じです。しかしそれぞれ異なる組織のため、当然ルールは違いますし、業務の進め方も違います。プロジェクトが円滑に進むよう、私は3機関の間に入り、それぞれのニーズの聞き取りや伝達、ミーティングや現場見学の調整などを行いました。これには、製薬会社出身という職歴や、『ACES』開発時の経験が活かされたと思います」

そして3年という開発期間を経て、『Smart119』はついに完成しました。2020年7月には千葉市消防局へ正式に導入され、救命の最前線を支えています。2023年4月からは、東広島市で運用が開始されます。また山梨県、札幌市など全国の自治体で、社会実装を目指した実証実験が行われています。

山尾「“自分たちが作ったものが実際の医療の現場で使われ、救命の向上に役立っている”ということに、メンバーそれぞれがやりがいや手応えを感じています。今後も実証実験を重ねていく中で、機能の強化などを図りながら、さらなる救急搬送の効率化を目指していきたいと考えています」

医療の課題は地域によりさまざまで、時代や社会状況によっても変化していきます。「命を救う」に完成形はなく、一つのシステムが出来上がっても最適化や新しい機能の開発といったチャレンジは続きます。
社会に貢献するとともに、経験を積み重ねて自分たちも成長していける。そこにSmart119で働くやりがいがあります。

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